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精神病の誕生:クレペリンの光と闇



精神病の概念を誕生させた偉才の功績と過ちを解き明かす

「精神病」という言葉は、もはや私たちの生活の中で一般的になっています。しかし、この用語が誕生したのはわずか100年以上前のことであり、その誕生には、エミール・クレペリンという一人の精神科医の尽力がありました。

講談社選書メチエ『精神病の発明 クレペリンの光と闇』は、この偉才クレペリンの功績と過ちを深く掘り下げた画期的な作品です。著者は、精神病理学の第一人者である星野仁彦氏。精神病という概念がどのように誕生し、それが現代社会にどのような影響を与えたのかを、豊富な資料と鋭い考察で明らかにしています。

クレペリンの光

クレペリンは、1856年にドイツに生まれました。彼は精神病理学の分野で多大な貢献をし、精神病の分類体系を確立しました。クレペリンの業績は、精神病の診断と治療を大きく前進させ、現代の精神医学の基礎となりました。

本書では、クレペリンの功績を「光」として称賛しています。クレペリンは、患者を綿密に観察し、彼らの症状を詳細に記録しました。この地道な取り組みによって、彼は精神病のさまざまな形態を区別し、それらを体系化することができました。

クレペリンはまた、精神病の経過と予後に関する洞察も得ました。彼は、精神病の中には回復するものもあれば、慢性的なものもあることを発見しました。この発見は、精神病に対する治療戦略に大きな影響を与えました。

クレペリンの闇

しかし、クレペリンの研究には、「闇」と呼ばれる問題点も指摘されています。特に、クレペリンが精神病に対する遺伝的要因を過大評価していたことが挙げられます。

クレペリンは、精神病は遺伝的な疾患であると信じ、健常者と精神病者との間に明確な境界線があると主張しました。この見解は、後に「優生学」と呼ばれる有害なイデオロギーの基礎となり、強制不妊や人種差別などの政策につながりました。

本書では、クレペリンの遺伝的要因に対する過大評価が、精神病に対する偏見と差別を助長したとして批判しています。また、クレペリンが精神病者の権利を軽視し、隔離や強制収容所での収容を容認していたことも指摘しています。

精神病の呪縛

クレペリンの光と闇は、精神病という概念が持つ複雑さを物語っています。精神病の診断と治療におけるクレペリンの功績は疑いの余地がありませんが、彼の遺伝的要因に対する過大評価は、精神病に対する誤った理解とそれに基づく差別につながりました。

本書は、精神病の概念がどのように誕生し、それが現代社会にどのような影響を与えたのかを理解するために不可欠な一冊です。クレペリンの功績と過ちを丹念に検討することで、精神病という呪縛から抜け出し、真の精神保健を実現するための道筋を探ります。

精神科医、精神保健従事者、心理学研究者必読の書。また、精神病やその概念に関心のある一般読者にも強くお勧めします。

この本を読めば、精神病に対する理解が深まり、その光と闇の両方を認識することができます。クレペリンの遺産をめぐる議論から、精神保健の未来について考えるきっかけを得られることでしょう。
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