
いのちの法廷: 久能恒子医療裁判の記録
医療の限界と法の葛藤を問う、衝撃のノンフィクション
2001年2月、当時67歳の久能恒子さんは、肺気腫を患って入院しました。彼女の容体はみるみる悪化し、生命維持装置なしでは呼吸が困難な状態に陥りました。
そこで医師たちは、久能さんの容態を回復させる望みがないと判断し、延命治療を中止することを提案しました。しかし、久能さんの家族はこれに猛反発。彼らは、母には生きる権利があり、治療を続けるべきだと主張しました。
こうして、医療倫理と法の葛藤を巡る前代未聞の裁判闘争が始まります。
著者の筆致が胸をえぐるノンフィクション
本書の著者は、ジャーナリストの河野義行氏。同氏は12年にわたって裁判の取材を続け、関係者への綿密なインタビューを敢行しました。その結果、裁判の全貌を克明に描き出すことに成功しています。
裁判の推移を追いながら、著者は医療の限界、尊厳死、家族の愛情、患者の権利など、さまざまなテーマに迫ります。その筆致は冷静かつ客観的でありながら、深い洞察力と共感性に溢れています。
医療における死の定義とは何か
現代医療では、生命維持装置によって延命することが可能になりました。しかし、その一方で、生命の終わりがいつなのかという問題も浮上しています。
この裁判では、脳死を死と定義するか、心臓停止を死と定義するかが大きな争点となりました。どちらの定義を採用するかによって、延命治療の是非が大きく左右されるからです。
裁判を通じて、著者は医療における死の定義をめぐる議論の歴史や現状を明らかにしています。これにより、読者はこの複雑な問題について深く理解することができます。
家族と医療従事者の葛藤
この裁判では、家族と医療従事者の葛藤も浮き彫りになりました。久能さんの家族は、最後まで母親の命を救おうと必死でした。一方、医師たちは患者の利益を最優先に考え、延命治療の中止を主張しました。
著者は、家族と医療従事者の双方の視点に寄り添いながら、彼らの葛藤の深層を描き出しています。読者は、この衝突がもたらす悲しみ、苦しみ、そしてジレンマをリアルに感じ取ることでしょう。
法廷という戦場での闘い
久能恒子医療裁判は、法廷という戦場で行われた壮絶な闘争でした。著者は、法廷での証言や弁論を詳細に記録し、当事者たちの心理や戦略を分析しています。
裁判の過程では、尊厳死をめぐる議論が法廷でも繰り広げられました。尊厳死を認めるべきか否か、医療従事者の意思決定の限界はどこにあるのか。これらの難題に裁判所はどのように向き合ったのでしょうか。
衝撃的な結末と裁判後の波紋
この裁判は、2012年に仙台高裁で結審します。その衝撃的な結末は、医療界と法曹界に大きな波紋を投げかけました。
著者は、裁判後の関係者たちの思いや、この裁判が医療倫理や法制度に与えた影響についても考察しています。読者は、この裁判が単なる過去の事件ではないことを痛感するでしょう。
命の尊厳と医療の限界を考える上で必読の一冊
「いのちの法廷」は、医療の限界と法の葛藤という難題を正面から見つめた、衝撃的で感動的なノンフィクションです。命の尊厳、家族の愛情、医療従事者の使命など、人間存在の根本的な問いに迫るこの一冊は、医療従事者、法曹関係者、そしてすべての人にとって必読の書です。
本書を読むことで、現代医療が抱える倫理的なジレンマや、死という避けられない問題について深く考えるきっかけになるはずです。また、医療と法の限界、そして命の尊厳のあり方について、自分なりの答えを見出すことができるでしょう。
化学と歴史のネタ帳: I. 酸とアルカリ
松江バルトン会資料集 第3集
1日5分 書けば明日が変わる できたことノート
ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 超ひも理論
「感情」は最強の武器である: 「情動的知能」という生存戦略
ウイルス学者の責任 (PHP新書)
世界史を変えた植物 (PHP文庫)
自然は脈動する: ヴィクトル・シャウベルガーの驚くべき洞察
フランクリン自伝 (岩波文庫 赤 301-1)
帝国ホテル厨房物語
ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 虚数
人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか
NEO HUMAN ネオ・ヒューマン: 究極の自由を得る未来
未完の天才 南方熊楠 (講談社現代新書)
視覚的認知過程における 等方空間と異方空間: 鏡像問題の分析と解決
科学の発見
未来探究2050 東大30人の知性が読み解く世界
禍いの科学 正義が愚行に変わるとき
オッペンハイマ-: 原爆の父はなぜ水爆開発に反対したか (中公新書 1256)
「相対性理論」を楽しむ本 よくわかるアインシュタインの不思議な世界 (PHP文庫)

本の情報館
本の情報館社会政治