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変節外交官の波乱に満ちた生涯を解き明かす



日本外交の闇と光に迫る、必読の書

『表題変節と愛国 外交官・牛場信彦の生涯』

著:高野孟

文春新書

激動の時代を生き抜いた外交官の複雑な足跡

牛場信彦は、戦前・戦中に数々の要職を歴任し、満州国の統治にも深く関与した外交官である。戦後はGHQに協力し、日本の戦後復興に尽力した。しかし、その変節と愛国心の真意については、長年謎に包まれてきた。

この本は、膨大な資料を駆使して牛場の生涯を克明に描き出す。彼の複雑な内面や、時代と政治に翻弄された軌跡を丹念に明らかにしている。

外交官としての二つの顔

牛場は、戦前の軍国主義的な外交官として知られる。満州国の建国にも関わり、日本の大陸進出に協力した。しかし、戦後はGHQとのパイプ役となり、日本の民主化を推進した。

著者は、牛場の二つの顔を対立するものとして単純化せず、それぞれの時代背景や個人の信念を丁寧に分析している。彼の変節には、政治的現実主義と愛国心が複雑に絡み合っていたことが浮かび上がる。

満州国との関わり

牛場は、満州国の初代外務大臣を務めた。彼は、満州国を日本の傀儡ではなく、ある程度の自治を持つ独立国として発展させることを目指した。その一方で、日本の戦略的利益を確保することも重要な課題として捉えていた。

著者は、牛場の満州国統治における功罪を冷静に検証している。彼の理想と現実との乖離、そして日本の植民地政策の限界が明らかになる。

戦後の役割

敗戦後、牛場はGHQの民間情報教育局(CIE)に協力した。CIEは、日本の民主化を推進するための組織であり、牛場はCIEの日本の報道検閲を担当した。

牛場のCIEでの役割は、賛否両論がある。日本の民主化に貢献したとする声もある一方で、言論弾圧に手を貸したと批判する声もある。著者は、牛場の行動を当時の日本の政治状況や個人の信念の文脈の中で考察している。

愛国心の謎

牛場の生涯を通じて一貫していたのは、日本への愛国心である。しかし、その愛国心が、いついかなる形で表出したのかは明確ではない。著者は、牛場の言動や行動を検証し、彼の愛国心の真意を探っている。

評者絶賛

「牛場信彦という特異な外交官の生涯を、詳細かつ客観的に描き出した意欲作。外交官の複雑な内面と、時代と政治の狭間で翻弄される姿が浮き彫りになる。」(歴史学者・本村凌二)

「戦前・戦中の外交史を理解するために必読の書。牛場信彦という謎多き人物の足跡を丹念に辿り、時代と人間の本質を浮き彫りにしている。」(ジャーナリスト・伊藤博敏)

渾身のノンフィクション

『表題変節と愛国 外交官・牛場信彦の生涯』は、戦前・戦中・戦後の日本外交を理解するための必読の書である。外交官という職業の光と闇、そして時代の中で翻弄される人間の複雑さを鮮やかに描き出した、渾身のノンフィクションである。

この本を手に取れば、激動の時代に生きた外交官の足跡を辿り、日本外交の過去と現在について深く考えることができるだろう。
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