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大井武蔵野館の6392日:伝説のカルト映画館の記憶を辿る



東京の片隅に佇む大井武蔵野館は、伝説のカルト映画館として長く愛されてきた。半世紀以上にわたり、この小さな映画館はスクリーンに映し出される奇妙で魅惑的な作品で観客を魅了してきた。

2023年に刊行された『大井武蔵野館の6392日』(立東舎)は、この象徴的な映画館の壮大な歴史を紐解く必読書である。著者の井上誠一氏は、大井武蔵野館の運営者である立川洋二氏への綿密なインタビューや、貴重な資料を基に、映画館の誕生から現在に至るまでの物語を鮮やかに描き出している。

薄暗い地下室から伝説へ

大井武蔵野館は1964年、東京モノレールの高架下に位置する薄暗い地下室として誕生した。当初は「大井武蔵野劇場」という名前の、一般的な映画館だった。しかし、1971年に立川氏が経営を引き継いだことをきっかけに、その運命は大きく変貌していく。

立川氏は、他の映画館では上映できないような、実験的な作品やカルト映画の上映に情熱を注いだ。大井武蔵野館は、塚本晋也監督の衝撃的なデビュー作『鉄男』の劇場公開を手がけ、当時無名だった押井守監督の『うる星やつら─完結篇』を一躍有名にした。

アンダーグラウンドカルチャーの拠点

やがて大井武蔵野館は、アンダーグラウンドカルチャーの拠点として知られるようになった。その薄暗いロビーは、熱心な映画ファンや奇才が集う社交場となった。立川氏は、映画上映後にゲストを招いてトークセッションを開催し、観客と映画制作者との距離を縮めた。

この映画館は、日本映画界で最も物議を醸す人物の一人である三池崇史監督にとっても、重要な場所だった。三池監督はここで初期の短編映画を上映し、後に大井武蔵野館を舞台にしたコメディ映画「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」を制作した。

閉館の危機と再生

しかし、2012年、大井武蔵野館は閉館の危機に陥った。立川氏の体調不良と経営難が重なったのだ。だが、映画ファンや映画制作者の熱心な支援により、映画館は再生された。2014年に新しい経営陣の下で再開し、今もなおカルト映画とインディペンデント映画の聖地として愛され続けている。

貴重な証言と貴重な資料

『大井武蔵野館の6392日』は、大井武蔵野館の歴史を豊富な証言と貴重な資料で綴っている。立川氏をはじめ、塚本晋也、押井守、三池崇史などの著名な映画監督や映画関係者が、この映画館が自分たちに与えた影響について語っている。

また、この本には、大井武蔵野館で上映された作品のポスターやチラシ、パンフレットなどの希少な資料も掲載されている。これらの資料は、この伝説的な映画館で繰り広げられたユニークな映画体験を生き生きと映し出している。

映画愛好家必読の書

『大井武蔵野館の6392日』は、映画愛好家、カルト映画ファン、日本の映画史に興味のある人にとって必読の書である。この本は、単なる映画館の歴史書ではなく、日本映画界の異端児たちが活躍した、忘れられない時代の記録なのだ。

そのページをめくるたびに、大井武蔵野館の薄暗いスクリーンに映し出された、奇妙で魅惑的な作品の記憶が蘇る。この伝説的な映画館が、これからも何世代もの映画ファンを魅了し続けることを願ってやまない。
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