
オウムに死刑を?衝撃のタイトルに込められた問いかけ
『オウムに死刑を』年報・死刑廃止96(定価2000円+税)
東京書籍から発行されている『年報・死刑廃止』は、死刑問題に取り組む研究者や活動家による論文やレポートを収録した年刊誌です。その96号にあたる本書は、「オウムに死刑を」という衝撃的なタイトルを掲げています。
オウム真理教事件と死刑
1995年3月に発生したオウム真理教による地下鉄サリン事件は、日本社会に衝撃を与えました。この事件では13人が死亡し、6000人以上が負傷するという惨事が発生しました。オウム真理教の教祖である麻原彰晃をはじめ、多数の幹部らが逮捕され、死刑判決を受けました。
死刑制度の存否については、古くから賛否両論が交わされてきました。オウム真理教事件は、死刑制度の是非を再考するきっかけとなり、本書もまた、この問題に正面から向き合っています。
多様な視点からの考察
本書には、オウム真理教事件の被害者、遺族、加害者、弁護人、研究者など、さまざまな立場から死刑制度について論じる論文が掲載されています。
・被害者・遺族の視点:
被害者や遺族にとって、死刑は加害者への報復や慰謝という意味合いを持ちます。しかし、死刑が真の償いになるのか、また死刑執行が被害者や遺族の心理にどのような影響を与えるのか、といった疑問も提起されています。
・加害者・弁護人の視点:
死刑を宣告された加害者やその弁護人は、死刑が非人道的で残虐な刑罰であると主張しています。彼らはまた、死刑が犯罪抑止力にならないことや、冤罪の可能性があることを指摘しています。
・研究者の視点:
死刑制度について研究してきた研究者らは、死刑の是非についての客観的なデータを提示しています。たとえば、死刑が犯罪を抑止するかどうか、死刑制度が社会に与える影響、冤罪の可能性などです。
問われる社会の価値観
本書は、オウム真理教事件を契機に、死刑制度の是非を多角的に考察しています。単にオウム真理教の幹部たちに死刑が妥当かどうかというだけでなく、より広範な意味での死刑制度の在り方についても問いかけています。
著者は、死刑制度は社会がどのような価値観に基づいているかを反映している、と述べています。報復や抑止といった価値観を重視する社会では死刑制度が支持される一方、人権や生命の尊厳を尊重する社会では死刑制度に反対する傾向があるとされています。
本書の意義
本書『オウムに死刑を』は、死刑制度について考える上で必読の書です。さまざまな立場からの視点が提示されており、読者は死刑をめぐる複雑な問題について深く理解を深めることができます。
死刑制度の是非は、今後とも議論が続くとみられます。しかし、本書の示唆するところを踏まえて、より建設的で有益な議論を行っていくことが期待されます。
購入を検討されている方へ
本書は、死刑制度について関心のあるすべての方にお勧めします。特に、オウム真理教事件に関心のある方、死刑問題に取り組んでいる方、法曹関係者、研究者の方々に役立つでしょう。
価格:定価2000円+税
発行:東京書籍
ISBN:978-4-487-80967-1
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