
武闘派の系譜を紐解く、極道ノンフィクションの傑作
表題武闘派 三代目山口組若頭(講談社+α文庫)
極道界を揺るがせた伝説の武闘派、それが三代目山口組若頭・山本健一である。本作「表題武闘派 三代目山口組若頭」は、ノンフィクションの巨匠・溝口敦氏が山本健一の生涯を丹念に取材し、その壮絶な生き様を余すところなく描き出した極道ノンフィクションの金字塔だ。
武闘派の血脈
山本健一は、山口組二代目若頭・田岡一雄直系の武闘派として生まれた。彼は幼少から武道を仕込まれ、並みはずれた身体能力と気迫を磨いた。後に山口組三代目組長・田岡三代目組長・田岡三好の舎弟頭となり、武闘派の若手組長として頭角を現した。
死闘の記録
本作では、山本健一が繰り広げた数々の死闘が克明に描かれている。抗争相手の組事務所への襲撃、ライバル組長との壮絶なタイマン、そして警察との執拗な追跡。山本健一は、常に最前線で命を懸けた戦いを繰り広げていた。
特筆すべきは、1985年1月27日に発生した「山一抗争」である。この抗争は山本健一率いる山口組と、ライバル組織である一和会との間で勃発した日本暴力団史上最大の内紛で、両組織合わせて12人が死亡し、26人が重軽傷を負った。山本健一は自ら先頭に立って戦場に赴き、一和会の若頭補佐を射殺するなど、その武闘派ぶりを発揮した。
組織の命運をかける
しかし、山本健一は武闘派であると同時に、組織運営にも卓越した能力を持っていた。彼は山口組の組織改革を主導し、暴力団排除条例制定阻止運動にも積極的に参加した。山本健一のリーダーシップの下、山口組はより強固で結束力の強い組織へと変貌を遂げた。
裏切りの代償
山本健一には、功績の裏側で、裏切りや暴行など数々の暗い部分もあった。本作では、そうした負の側面も赤裸々に描かれている。山本健一は、その武闘派ぶりと裏切りに対する厳罰さから、山口組内でも恐れられていた存在だった。
1989年、山本健一は山口組四代目組長・渡辺芳則に対するクーデター計画が発覚し、組から除籍された。その後、彼は一和会系組織に加わり、山口組と対立した。しかし、1992年8月19日、山本健一は一和会系組織の組員に射殺され、その波乱に満ちた生涯を閉じた。
伝説の武闘派に迫る
「表題武闘派 三代目山口組若頭」は、山本健一の武闘派としての実像はもちろん、その組織人としての資質や裏切りの代償など、多面的な人物像を浮き彫りにした傑作ノンフィクションだ。
著者の溝口敦氏は、膨大な資料と関係者への丹念な取材に基づき、山本健一の生涯を余すところなく描き出した。本作を読むことで、伝説の武闘派の生き様をリアルに体感することができる。
極道ノンフィクションの金字塔
「表題武闘派 三代目山口組若頭」は、極道ノンフィクションの金字塔として、多くの読者から高い評価を得ている。その迫力ある筆致と綿密な取材は、読者に強いインパクトを与えること間違いなしだ。
山本健一という男の人生を通じ、日本の裏社会の闇と光に迫るこの作品は、極道ファンだけでなく、ノンフィクション愛好家や歴史に興味のある方にもぜひおすすめしたい一冊である。
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